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疾患別養生法

2022.04.18
疾患別養生法

【薬剤師が解説】花粉症の西洋医学的治療法

くしゃみや鼻水、目の痒みなど、日常生活に支障をきたす「花粉症」。

人によっては、症状が辛すぎて外に出られないという訴えも少なくありません。

花粉症のようなアレルギー反応には、症状が出てから対応するのではなく、日頃からご自身のライフスタイルに合った治療と養生(セルフケア)を行うことが大切です。

 

「治療」と聞いてまず思い浮かぶのは、病院でもらう処方薬ですよね。たとえ処方されたお薬でも、正しく使わなければ症状が悪化して逆効果になることもあります。

そこで今回は、皆様にお薬を正しく使って頂くため、「花粉症の西洋医学的治療法」についてご紹介します。

 

1. 抗ヒスタミン薬(経口薬、点鼻薬、点眼薬、貼付剤)      

くしゃみ、鼻水、目のかゆみなどを引き起こすヒスタミンの作用をブロックします。

代表的な副作用は「眠気」です。眠気が強く出やすい第一世代のお薬と、眠気が出にくい第二世代のお薬に分類されており、ライフスタイルによって選択されています。

下のグラフを参考に、服用しているお薬の効果の強さ・眠気の出やすさをチェックしましょう。

*小児に使いやすい抗ヒスタミン薬

・オロパタジン(アレロック):2歳以上

・ロラタジン(クラリチン)、エピナスチン(アレジオン):3歳以上

・レボセチリジン(ザイザル)、セチリジン(ジルテック)、フェキソフェナジン(アレグラ)

→生後6ヵ月以上

 

*抗ヒスタミン作用と血管収縮作用のある薬の配合剤もあります。

→ディレグラ(アレルギー性鼻炎のみの適応)

ディレグラの成分は、抗ヒスタミン作用を持つ「フェキソフェナジン」と血管収縮作用を持つ「プソイドエフェドリン」を合わせたものです。

→鼻づまりの症状がひどい場合、アレグラよりもディレグラが適している場合がありますが、長期の使用はおすすめできません。

 

点眼薬:アレルギーによる目のかゆみ、結膜充血などの諸症状を改善します。

例)アレジオン、リボスチン、パタノール、ザジデンなど

コンタクトレンズ装着時に使用可能な点眼薬は、アレジオン点眼液のみです。医師の診察が必要ですが、コンタクトレンズを使用している人はこれを処方してもらうのがベターでしょう。

また、パタノール点眼液は、PH・浸透圧が人間の目に近く刺激が少ないとされています。

 

点鼻薬:アレルギー性鼻炎にともなうくしゃみや鼻水を軽減します。

貼付剤:薬の有効成分が体内で長時間一定に保たれます。

 

2. ケミカルメディエーター遊離抑制薬(経口薬、点鼻薬、点眼薬)

肥満細胞の細胞膜を安定化し、ケミカルメディエーター(*1)の放出を抑制します。

肥満細胞が放出するケミカルメディエーターは、さまざまなアレルギー反応(血管透過性の亢進、血流の増加、炎症細胞の遊走など)を起こします。そのため、ケミカルメディエーターの放出を防ぐことで免疫細胞の過剰なはたらきを抑え、鼻閉の悪化を抑制することができるのです。

薬:クロモグリク酸ナトリウム(インタール)、ペミロラストカリウム(アレギサール、ペラミストン)、トラ二ラスト(リザベン) など

 

(*1)ケミカルメディエーターとは

細胞間の情報伝達に作用する化学物質のこと。化学伝達物質ともいう。

ヒスタミン、ロイコトリエン、トロンボキサン、血症板活性化因子、セロトニン、ヘパリンなどがこれに当たる。

 

3. ロイコトリエン受容体拮抗薬

鼻づまりの原因となる鼻粘膜の腫れを引き起こすロイコトリエンが、免疫細胞から放出されるのを抑制する薬です。鼻づまりだけでなく、くしゃみや鼻水にも効果的です。

薬:プランルカスト(オノン)、モンテルカスト(シングレア、キプレス) など

 

4. プロスタグランジンD2・トロンボキサンA2受容体拮抗薬

トロンボキサンA2による血管透過性亢進作用や炎症性細胞浸潤を抑制します。

そのほか、好酸球など炎症細胞上のプロスタグランジンD2受容体に結合することにより、炎症細胞の遊走や脱顆粒を抑える作用もあります。

鼻づまりに対しては抗ヒスタミン薬よりも優れているといわれています。また、くしゃみや鼻水にも有効です。

薬:ラマトロバン(バイナス)

 

5. Th2サイトカイン阻害薬

Th2細胞から産生されるアレルギー症状を引き起こす体内物質が出るのを抑えます。

くしゃみや鼻水よりも、鼻づまりに効果があります。

薬:スプラタスト(アイピーディ)

 

6. 点鼻用血管収縮薬

アレルギー性鼻炎の治療の際に鼻に噴霧する点鼻薬です。一時的には有効です。

粘膜の血管を収縮させて粘膜の腫れを取り除くため、鼻づまりに効果的です。

※使い過ぎると鼻づまりが強くなる(薬剤性鼻炎)ときもあるので、1日1〜2回で夜寝る前に使うのが基本です。

→有効時間が短いので何度も使うことになってしまい、逆に鼻炎が悪化してしまうこともあります。学会のガイドラインでも、血管収縮薬の点鼻薬は“連用により薬剤性鼻炎になる”、“10日ほどの使用に留めるよう指導すべき”と記載されています。

薬:トラマゾリン塩酸塩(トラマゾリン点鼻液)

 

7. ステロイド薬(点鼻薬、経口薬、点眼薬)

免疫反応を抑え、どのタイプの症状にも効果がみられます。

 

*鼻噴霧用ステロイド薬:初期の軽い症状のうちから定期的に使用すると良い。

(長所)

・局所的作用のため、全身的には吸収されづらく安心。

・花粉症治療に特有な「眠気」がない。

・内服薬を補う効果がある。

 

アラミスト:他のステロイドに比べて強力。鼻・眼反射を介して目の症状にも効果的。

      効果発現が早く持続時間が長い。

ナゾネックス:全身作用が最も少ない。

フルナーゼ:小児にも使用可能。

エリザス:添加物が入っていないため刺激が少なく、鼻粘膜が過敏なときでも使える。

 

コールタイジン:血管収縮剤とステロイドが入った点鼻薬。

長期の使用はできませんが、特に鼻づまりがひどいときに点鼻して鼻の通りをよくしてから、上記のステロイド点鼻薬を使用することがあります。

 

※フルナーゼとコールタイジンは市販薬でも販売されています。

 

*経口ステロイド薬:鼻噴霧用ステロイド薬では抑制できない場合に使うことがあります。副作用を考慮して短期間の投与に限定して服用します。

薬:ベタメタゾン・d-クロルフェニラニンマレイン酸塩(セレスタミン、エンペラシン) 

 

*点眼薬:目の症状がひどいときに使用します。定期的な検査が必要のため眼科受診が必要です。

薬:フルメトロン、リンデロン

 

8. 生物学的製剤(ゾレア皮下注)

2019年に重症の花粉症患者を対象に抗IgE抗体製剤の投与が可能となりました。

花粉が体内に入ったときに遊離するIgEと結合し、IgEとマスト細胞の結合を阻害することでアレルギー反応を抑えます。

 

9. レーザー治療

花粉が付着する鼻の粘膜にレーザーを照射することで、粘膜組織をいったん熱傷を起こした状態にして変性させ、過剰なアレルギー反応を抑える治療です。

空気の通り道が広くなって鼻づまりに効果があるほか、レーザーを当てることで粘膜が乾燥するため、花粉が付着しにくくなったり、鼻汁の分泌が起こりにくくなったりします。

花粉症の症状が出てからでは治療が難しいため、花粉が本格的に飛び始める前に治療を受けておく必要があるといわれています。

 

(レーザー治療が向いている人)

・薬の服用によって眠くなると特に困る職種の人や受験生

・薬を飲めない妊婦さん

・忙しくて頻繁な通院が難しいビジネスパーソン

 

10. 高周波電気凝固法

レーザー治療が鼻粘膜の表面を焼くのに対し、鼻粘膜の下に高周波電流を流して細胞を凝固・壊死させる治療法です。ニードルと呼ばれる極細の針を鼻粘膜下に挿入し、これが電極となって高周波が発生、周辺の組織を凝固させます。

凝固した組織は一時的に腫れますが、3〜8週間程度で引き、その頃には鼻詰まりが解消されるという仕組みです。持続期間は1シーズン限り。健康保険が適用されます。

 

11. 減感作療法(皮下注射や舌下投与)

西洋医学的治療の根本療法です。

ごく微量の花粉エキス(アレルゲン)を少しずつ体内にいれることで、免疫機構がアレルゲンを有害な物質であると間違わないように認識を正すことで症状を改善していきます。

 

舌の裏側(舌下)に微量の花粉エキスをしみこませたパンを置き、2分間放置したうえではき出す方法や、スギ花粉限定でシダキュアを使う方法があります。

徐々にアレルゲンを体に入れることで、免疫系を再調整し、過敏になっているIgE抗体を「鈍感」にすることが期待できます。

1年目が終了した時点で約8割の患者さんに症状の消失や軽快、薬が不要になったなどの効果がみられているそうです。

治療期間3~5年、少なくても1ヵ月に1回受診が必要です。

錠剤:シダキュア(スギ花粉限定)

 

〈まとめ〉

今回は、「花粉症の西洋医学的治療」についてご紹介しました。

現在、花粉症の西洋学的な治療法は、病気そのものを完全に治す根治療法もありますが、対症療法が基本となっています。

原因やメカニズムを理解した上で西洋薬を正しく使うことは大切ですが、それだけでは表面治療になってしまいがち。

西洋薬の表面治療に加えて、セルフケアや漢方薬を取り入れてあげることで、内側から症状の改善が期待できます。

 

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次回は、「花粉症予防と対策、中医学観点における花粉症になりやすい人の体質項目」をご紹介していきます。

 

〈この記事を書いた人〉

八仙堂(漢方相談員、薬剤師)堺谷 弥幸

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